多摩獣医科病院のブログ

うさぎによく見られる不正咬合とは? どんな歯科処置が必要か?

うさぎによく見られる不正咬合とは? どんな歯科処置が必要か?

 

うさぎによく見られる歯の疾患に不正咬合(ふせいこうごう)があります。本記事では、現在うさぎを飼っている人やこれから飼おうと考えている人のために、不正咬合とは何か、発症したらどんな歯科処置が必要かなどを解説します。実は、うさぎによくある疾患で、日々の世話の仕方で回避できる症状です。どのようなことに注意しなければならないのかを、飼い主として把握しておくことは大切です。

不正咬合とは何か?

「不正咬合」とは噛み合わせの悪さを意味しており、うさぎ、ハムスター、リスなどの「げっ歯類」という、前歯が発達して一生伸び続ける哺乳類によく見られる症状です。うさぎの前歯は目に見える上下2本ずつに加え、上前歯の裏側に2本の小切歯があります。臼歯と呼ばれる奥歯は22本あります。

うさぎに限らずげっ歯類は草食動物であるため、合計28本の歯を使い、植物や野菜など繊維の多いものをすり潰すように食べます。繊維質をすり潰すことで消化を促すためです。しかし、うさぎの歯は人間や肉食動物と違い、ずっと伸び続けます。実は繊維質の多い食物をすり潰すのは、歯並びを揃え続けようと意図的に歯をすり潰すためでもあります。

繊維質のあるものをあまり食べないなど異質な食生活が原因で歯が伸びすぎてしまい、歯並びのバランスが崩れますと、一部の歯をうまく使いこなせません。これが不正咬合という症状です。ほかにもケージのかじりすぎなどで歯が欠けてしまっても不正咬合につながります。

うさぎ、ハムスター、リスなどげっ歯類の飼い主は、歯並びのバランスが崩れていないか定期的にチェックする必要があります。

不正咬合の症状は?

飼い主が不正咬合の発症を見極めるポイントは主に3つです。

2-1.食べ物が食べづらそう、食欲不振
エサを食べるのに手こずるようになりますと、噛み合わせの悪さを疑いましょう。うまく食べ物が食べられないことで、食事自体を嫌い、食欲不振になるケースもあります。食事の量が減ってきていると感じた場合は、動物病院に相談しましょう。

動物病院の診療時間に合わず、やむを得ず症状に気づいてから病院に行くまで長時間を要する場合には、病院に診察へ行くまでの期間、細かく刻んだものや柔らかいもので空腹をしのがせましょう。アップルジュースや湯でエサをふやかしたものや、うさぎ用の栄養フードが推奨されます。

よだれが多い

うさぎの噛み合わせが悪いとよだれを多く流すこともあります。歯のバランスが悪いために唾液をうまく飲み込めないのでしょう。

また、症状が進行するとたまった膿などが原因で顎が歪むケースもあります。歯肉が傷ついて出血する場合も見られます。この場合うさぎは顎のあたりを触られると痛くて嫌がります。一連の様子が見られる場合、すぐに動物病院に相談しましょう。

涙が出る、目が飛び出している

うさぎの歯は先端だけでなく根元が伸び続けることもあります。特に臼歯の根元が伸び続けた結果、涙を通す鼻涙管が圧迫され、やたら涙が流れやすくなります。加えて、臼歯が眼球を圧迫した結果、目が出っぱるケースもあります。一連の異常が見られた場合も動物病院へすぐに連れていくことが大切です。

不正咬合の対策は?

うさぎを不正咬合にしないためには食生活の管理徹底が重要となります。牧草を主食にすることで不正咬合をある程度防げます。牧草は特に繊維質が安定して多く含まれていますので、うさぎは喜んで主食をすり潰しながら食べるでしょう。これは人間でいうところの毎食の米などと同じ感覚です。

おやつ類をやりすぎてしまうと、食生活が乱れて不正咬合になりやすいといわれています。毎日のおやつの量はほかの動物と比べて少なめにしましょう。おやつだけで満足して牧草を食べなくなるのを防ぐためです。
牧草はうさぎの歯にいいだけでなく、食物繊維により腸内などほかの部位を正常に機能させるためにも重要です。うさぎの食生活は牧草を主食にすることを守り、サブメニューでうさぎの好みに合わせましょう。バランスのとれた食事がうさぎの健康を守ります。

不正咬合の歯科処置は?

不正咬合の処置は主に前歯をカットし、歯並びのバランスを整えることです。処置の際には重篤化した症状の解決や動物が暴れることを防ぐなどの目的で、全身麻酔をするケースもあります。

うさぎに不正咬合が認められた場合、切歯は3~4週ごと、臼歯は1~数ヶ月に1度程度の定期健診を求められることが多いです。不正咬合になったうさぎは食事量が減ってしまうため、健康的に食事を摂ることで健康が守られているかを専門家の視点でチェックしてもらうことが大切です。

もちろん処置後は飼い主によるアフターケアが最も大切です。牧草主食の適切な食事を与え、毎日の食事量の記録をつけて確かめておきましょう。

まとめ

うさぎなどげっ歯類の歯は伸び続けるため、伸びすぎた結果不正咬合になるケースがあります。原因としては、牧草が主食でないなどの異質な食生活やケージのかじりすぎなどによる歯の欠損などが挙げられます。

動物病院での処置はもちろん可能ですが、処置後も経過観察も兼ねて定期検診が必要になるケースも多く、飼い主さんの負担が増えかねません。そうなる前に、飼い主さんによる健全な管理が大切です。

神奈川県川崎市宮前区にある「多摩獣医科病院」では、うさぎの健康相談を承っています。犬、猫も対象であり、歯科に限らず、一般外来や避妊治療など総合的に診療を取り扱っています。宮前区にお住まいの方でペットの健康でお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。