多摩獣医科病院のブログ

フィラリアとは何か? 犬に予防接種をして脅威を防ごう

フィラリアとは何か? 犬に予防接種をして脅威を防ごう

 

「フィラリア」とは蚊を媒介にして犬などのペットに感染する寄生虫の一種です。最悪の場合、犬の命に関わるほどの恐ろしいものです。しかし多くの方は、フィラリアを正しくご存じの方は少ないようです。そこでフィラリアの定義や犬に感染すると起きる症状、予防のために飼い主ができることなどを解説していきます。

フィラリアとは何か?

フィラリアとは線虫類糸状虫科に属する寄生虫の総称です。フィラリアによって犬が感染する病気はフィラリア症または犬糸状虫症とも呼ばれます。昔は犬の死因としてフィラリア症が多くの割合を占めていました。現在も暑い時期を中心に犬の脅威になっています。

フィラリアは糸のように細い形をしており、成虫になるとオスで17cm、メスで28cmもの体長に成長します。幼虫の段階で蚊に寄生しており、蚊が動物を刺し、血を吸っている最中に体内に侵入します。フィラリアの幼虫は主に犬の体内に入り込んだまま成虫まで育っていきます。

フィラリアの寄生は犬に多く、肺動脈に寄生することでフィラリア症という深刻な病を引き起こします。 猫にフィラリアが寄生するケースも稀にありますが体内で幼虫があまり育たない傾向にあります。しかし、最近の研究では、数が少ないながらも猫のフィラリア症が見られるようになっており、予防が必要とされています。

すべての犬が深刻な病気になるわけではありませんが、万が一に備えて予防接種が推奨されます。

犬がフィラリアに感染するとどうなる?

フィラリアは主に犬に感染し、主に心臓や肺に寄生して心肺機能を阻害します。

成長段階で犬の体内に侵入したフィラリアは、主に肺動脈に棲みつきます。 肺動脈は心臓の右心室にあり、肺に必要な血液を送ります。しかし棲みついたフィラリアが邪魔をして血液の流れを妨害します。フィラリアは肺動脈に棲みついたまま成虫へ育っていきます。もちろん体長も伸びるため、肺動脈のほとんどのスペースを独り占めしてしまいます。これにより、肺に血液が送られなくなり、犬の心肺機能を阻害するのです。

フィラリア症に感染した犬は、息切れが多くなったり、散歩中に動けなくなったりするなどの予兆を見せます。ほかにも咳が頻繁になる、腹水がたまる、血を吐いてしまう喀血、呼吸困難、 肝臓や腎臓の機能が低下するネフローゼ症候群など、さまざまな異変が現れます。

以上で挙げたうち、複数が該当する場合は、フィラリア症が疑われますので即刻動物病院に連れていきましょう。容態の急変がひどい場合は、動物の救急外来を呼ぶことも考えましょう。

犬にフィラリアの予防接種を受けさせよう

フィラリア症対策となる予防接種は3種類あります。飲み薬、注射、滴下剤です。

しかし予防接種用とされる薬のほとんどはフィラリアの寄生自体を防ぐことが目的ではありません。体内の薬の作用でフィラリアを撲滅することが目的です。その中には予防接種前にすでに侵入したフィラリアも含まれます。予防接種の目的はフィラリアを寄せつけないことではなく、あくまでも犬がフィラリア症にかからないためです。

飲み薬

スタンダードなのは飲み込むタイプの錠剤なのですが、チュアブルタイプと呼ばれるおやつ感覚で噛み砕いて服用する薬もあります。これでしたら、ドッグフードの中に混ぜて一緒に食べさせることができます。

どちらの薬も頻度は月1回で十分です。

滴下剤

犬のうなじにあたる部分に薬を垂らすスポイトタイプになります。このタイプはフィラリア症と合わせ、ノミやダニを原因とした感染症対策を兼ねて配合されたものが多いです。こちらも頻度は月1回です。

注射式

注射式は予防接種全体で最もスタンダードなタイプなのですが、犬に限らずペットは注射針のような処置過程での痛みを人間以上に嫌がる習性があるので注意が必要です。ただし注射による予防接種の効果は半年~1年間と飲み薬や滴下剤よりも持続しますので、飼い主にとっては楽な方法です。

予防接種で注意すべきこと

フィラリアの幼虫に寄生されやすい蚊は、日本では5~11月に多く見られます。この間に適度な間隔を設けつつ予防接種を受けさせましょう。薬の量は犬の体格で異なるため、蚊の時期になる前に、早めに獣医師などの専門家にアドバイスをうけておきましょう。

また予防接種前には犬にフィラリア検査を必ず受けさせます。 フィラリアに感染したまま予防接種を行うと犬がショック症状に見舞われる可能性があるからです。

フィラリア対策は蚊を寄せつけないことも大切

犬にフィラリア症の予防接種をするだけでなく、飼い主が蚊を寄せつけないよう配慮することも大切です。

蚊取り線香

蚊取り線香を焚くことで、蚊を撃退できます。最近ではビャクダンなど癒やされるような香りのタイプも販売されるなど、蚊取り線香のバリエーションも多様化しています。わずかな燃焼時間で半日の駆除作用を発揮する優れものもありますので、ドラッグストアなどで商品を比較しつつ、理想的な一品を選びましょう。

蚊撃退スプレー

犬がいる部屋の中に数プッシュするだけで半日のような長い作用を発揮する蚊対策スプレーがあります。蚊は一般的に飛び疲れのために壁などに止まっている時間が長いとされます。スプレーの薬剤が壁に吸着することで蚊を撲滅してくれます。

電子蚊取り器

最近は電子蚊取り器にも注目です。電池を入れてスイッチを入れたり、コンセントに挿したりするだけで動きはじめます。大手製薬会社のものですと、高水準で安定した殺虫作用を発揮します。

犬用虫除けグッズ

散歩に出かけるときは、お出かけ前に、犬などのペットに対応した虫除けグッズを使いましょう。首輪に装着するだけで虫除けになるクリップや、犬用に作られた虫除けスプレーなど多種多様なバリエーションがあります。犬の性格、体質、飼い主の使いやすさなどを総合的に考慮し、理想の一品をチョイスしてみてください。

まとめ

フィラリア症を防ぐには予防接種が重要で、薬による予防はほぼ100%の確率で可能です。しかし、幼虫が発育している間に駆除する、というものですので、感染そのものを防ぐわけではありません。定期的で確実な投薬が欠かせないのです。

神奈川県川崎市宮前区の「多摩獣医科病院」でも、フィラリアなどの感染症に対する予防接種を実施しています。フィラリアの症状は、心臓につながる大きな血管を塞ぎ、血尿や貧血、呼吸困難などをともない、急死することもあります。そうならないために、常日頃から予防接種や、蚊取り対策などを徹底するようにしておきましょう。