猫は虫歯にかかりづらい動物の一種とされていますが、だからといって口のケアを放っておくことはおすすめできません。猫にも人間と同じく歯周病にかかるケースがあるからです。今回は猫の歯周病を防ぐため、飼い主ができる4つのポイントを紹介します。これを読んで、今から猫の口のケアを始めましょう。
子猫のうちから歯磨きに慣れさせる
猫は小さいうちから歯磨きに慣れさせることが大切です。動物は人の手により外部から口へ物を入れられると激しく抵抗することがあります。特に猫は口周りを触られることを嫌うため、早めに手なずけましょう。
猫は生後4~6ヶ月ごろまでに歯磨きに順応させる必要があるとされています。その時期には永久歯が生え揃うからです。乳歯は病気に関係なく抜け落ちるので、動物歯科で抜歯しても後から永久歯が生えてきます。しかし永久歯は人間と同じく、重度の歯の病気などで抜いてしまうと生えてこず、見栄えが悪くなったり、食事がしづらくなったりします。
子猫の歯磨きは、決して無理強いすることなく、猫の機嫌に合わせながらそっと歯ブラシを差しのべるイメージで行いましょう。優しく歯を磨いてあげることで、猫も段々と歯ブラシを受け入れていきます。基本的に2~3日に1度やってあげるだけで歯石の付着などを抑えられます。
大人の猫の場合は、まずは鼻先に猫用歯磨き粉をつけて舐めさせ、味を嫌がる様子がないか確かめてください。大丈夫なら指に微量の歯磨き粉をつけて磨き、そこから綿棒、歯ブラシと段階を進めて歯磨きに慣れさせましょう。
この対策に何週間もかかるとされますが、諦めずに猫のペースに合わせながら歯磨きに慣れさせてください。どうしても猫が歯磨きに応じてくれない場合は動物病院に相談してください。
猫用の歯ブラシ・歯磨き粉を使う
猫の歯磨きには猫用の歯ブラシと歯磨き粉を使いましょう。人間用の歯ブラシだと猫の独特な歯並びと噛み合わず、磨き残しが出やすくなります。
歯磨き粉も人間用だと、配合成分により刺激が強過ぎて、猫が歯磨き嫌いになってしまうことがあります。加えてキシリトールが配合されたものはペットの身体に入るとインスリンが過剰分泌され、最悪の場合には命に関わる恐れもあります。猫用の歯ブラシや歯磨き粉は人間用で代用することなく、必ずペットショップで揃えましょう。
歯ブラシはヘッドが小さいタイプがおすすめです。小さなヘッドのおかげで奥歯にも難なく届くなど、猫の独特な歯並びも苦にしません。ほかにもローラータイプやスポンジタイプなど、歯磨きを嫌がりやすい猫でもブラッシングしやすいように工夫した形になっています。
歯磨き粉は「犬猫用」として売られているものが多いです。最近はシーフードフレーバー、バニラミント、 チキンなど、人間用に負けず劣らずのバリエーションが揃っています。
市販のデンタルケアグッズで口の環境を整える
歯磨き以外にも、市販のデンタルケアグッズを複数種類揃えて猫の口腔内環境を清潔に保ちましょう。 歯磨きシートなら歯磨き剤があらかじめ染み込まれているので、直接猫の歯を拭き取るように磨いてもいいでしょう。ただし手を猫の口に入れるので、噛まれてけがしないように注意が必要です。
歯磨きガムは猫に噛ませるだけで口腔内環境をきれいにします。猫に噛み癖を与えることで歯に引っかかっていた歯垢や歯石などの異物を外せます。これが実現するように形や素材を工夫したものがほとんどです。おやつに混ぜて与えるといいですが、身体全体の健康のために適量を守りましょう。
ほかにも歯磨き用おもちゃもあります。歯ブラシに猫が慣れないうちはこちらを与えることも考えられます。こうしたおもちゃにはマイクロファイバーやヘチマなど、歯の表面をきれいに掃除してくれる成分が含まれているので、ペットショップでご確認してみるのも良いでしょう。
動物病院でたまった歯石を掃除してもらう
日頃から歯磨きやデンタルケアをしていても、人間の手では完璧に異物を取り除けません。歯石がたまり過ぎた場合は、動物病院に任せることも考えられます。
猫の口臭が明らかに臭いと感じる、歯が黄色っぽい、歯肉の赤みが強く腫れて見える、よだれが多くなった、食欲がなくなったなどの様子は、歯周病のサインとされます。
また、歯茎から血が出ていたり、歯がグラグラしていたりすると、歯周病が進行して歯肉炎、歯槽膿漏といった症状が疑われます。上記の状態が見られたら、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
歯石除去で済む場合は、全身麻酔を施した上、超音波スケーラーなどで口内全体の歯石を落としていきます。人の手が届きづらい歯周ポケットも、スケーラーなどの特殊な機械を使えばきれいにできます。最後に研磨剤を使って猫の歯をスッキリと仕上げます。
炎症や腫れなどの状態に応じて投薬治療を施されるケースもあります。歯周病があまりにも重篤だと抜歯の可能性もあることを覚えておきましょう。
また、動物病院の中には、歯科治療に対する知識を伴わないところもあります。抜歯の必要がない治療でも抜歯する獣医師もいるようです。このようなトラブルを避けるために、歯科衛生士が常駐している動物病院を選びましょう。
まとめ
猫は虫歯にならない動物の一種ですが、それ以外の歯の病気にかかる可能性はあります。事態を防ぐには、日頃から猫の歯磨きなどデンタルケアを習慣づけることが大切です。
猫は口周辺を触られるのを特に嫌がる動物なので、いきなり猫用の歯ブラシを使わず、まずは歯磨き成分の入ったガムやおもちゃを与えることや、指先や綿棒に猫用歯磨き粉をつけて優しく磨いてあげることから始めましょう。子猫のうちに歯磨きに慣れさせると、猫のデンタルケアがやりやすくなります。
神奈川県川崎市宮前区にある「多摩獣医科病院」では、猫に限らず、犬やうさぎの診察・治療も承っています。歯の検査や診療に限らず、一般外来、避妊治療、感染症などの予防接種など幅広い治療メニューを扱っています。川崎市宮前区在住でペットの健康に関する問題が起きたときは、すぐに当院までご相談ください。