多摩獣医科病院のブログ

動物病院で椎間板ヘルニアの治療! 知っておきたい基本的知識とは?

動物病院で椎間板ヘルニアの治療! 知っておきたい基本的知識とは?

 

ペットが首や背中や腰などに強い痛みを訴えるように鳴くことや、突然歩けなくなるといった理由で動物病院に来院されることがあります。このような症状を発症したとき、その原因として椎間板ヘルニアが挙げられます。動物が発症する椎間板ヘルニアとはどのようなものなのか、知っておきたい病態・症状・治療法などを紹介します。

椎間板ヘルニアとは

脊椎と脊髄、椎間板

人を含めた動物の脊椎(背骨)には、脊髄という神経が走行しています。これは脳から腕や脚へ運動の指令を出したり、逆に腕や脚の感覚を脳に伝えたりする役割を担っています。そして、脊椎はいくつもの骨が連結することであたかも一本の骨のようになっています。その脊椎の間には椎間板とよばれるクッションのような役割を果たしているものがあります。

椎間板ヘルニアとは

椎間板とよばれるクッションは、脊椎が伸びたり曲がったりすることによって生じる圧力を吸収する作用があります。しかし、過度な圧力が加わることによってこの椎間板が断裂するなどのトラブルを生じることがあります。その結果、椎間板が隣接する脊髄に圧迫を生じさせてしまい、強い痛みが発生します。これが椎間板ヘルニアとよばれるものです。

椎間板ヘルニアの症状

首・背中・腰に生じやすい

脊椎(背骨)の構造上、首・背中・腰といった彎曲する部位に症状が出やすいのが特徴です。そのため、一口に椎間板ヘルニアといっても、首に原因と症状がある場合や、腰に原因と症状がある場合があります。

症状はヘルニアを引き起こした部位より下位に生じる

脊髄という神経は脳からの指令を腕や脚に伝達する役割を担っています。そのため、首にヘルニアを生じたときには首よりも下位(首から下の腕・体・脚など)に症状があらわれます。一方、腰にヘルニアを生じたときには症状は下位(脚など)に症状が出ます。

腰部の椎間板ヘルニアの症状

脊髄が障害されることでさまざまな症状があらわれることになります。腰部の椎間板ヘルニアでは、次のような症状があらわれます。軽度の場合には、背中に痛みがあるため、普段よりも飛んだり跳ねたり階段を上ったりすることを嫌がるようなことが多いです。中等度の場合には、後脚で身体を支えることが困難になります。ふらつきが強くなることや、前脚を頼りにして歩くようになることがあります。そして、重度の場合には、後脚が完全に麻痺しており動かすこともできず、感覚も完全に失った状態となります。また、自力での排泄も困難となります。

首部(頸部)の椎間板ヘルニアの症状

首の椎間板ヘルニアでは、多くの場合に強い痛みが主たる症状となります。人間であれば痛みを訴えることができますが、動物の場合では首をすくめて震えているという状況になっていることが多いです。また、食事をとりたがらない場合や頭を触られることを嫌がる場合などもあります。重度の場合には、後脚だけでなく前脚にも麻痺を生じることや、呼吸を支配する筋肉(横隔膜)にも麻痺を生じることで生命にかかわることもあります。

椎間板ヘルニアの診断

神経学的検査

前脚や後脚に麻痺が生じていないかを確認することや、脚などを「打腱器」とよばれる器具で叩くことで神経伝達の程度を確認する診察を行います。

レントゲン検査

脊椎の状態を確認するためにレントゲン検査を行います。これによって脊椎と脊椎の間が狭くなっていないのか、過度に曲がっていないのかなどを調べることができます。ヘルニアと似た症状を呈する病気はさまざまあり、腫瘍や骨折などと識別して診断を行うことができます。

MRI検査

椎間板ヘルニアが実際に生じているかを確認するためには、より詳細な検査であるMRI検査を行います。これによってヘルニアがどのように脊髄を圧迫しているのか、どの程度脊髄を圧迫しているのかといった状況を判断することができます。

血液検査や尿検査

椎間板ヘルニアのような症状を呈していますが、他の疾患を有している可能性もあります。そこで、血液検査や尿検査を行うことで全体の状況を把握し、治療の方針を決定することになります。

椎間板ヘルニアの治療

内科治療

運動制限や炎症を抑える薬を用いることで、症状を緩和していきます。運動制限では、ケージ内で厳格に管理し安静にさせる場合や、階段やジャンプなどを控えるといった方法をとる場合があります。

外科治療

椎間板ヘルニアを生じている部位の椎間板を摘出します。症状が重い場合にはできるだけ早く手術することが優先になります。手術後には一週間程度の入院を必要とし、その後にはリハビリを行う場合が多いです。動物の椎間板は非常に小さいものですが、わずかな圧迫でも重度の症状を呈することがあります。

重い症状を残してしまった場合

重度の腰部椎間板ヘルニアの場合などでは、治療を行っても下半身の完全な麻痺や排泄の障害を残すことがあります。そのような場合には、車いすを使用して散歩を行うことや、一日数回の排尿介助などを行う必要があります。

まとめ

この記事では、椎間板ヘルニアの基本的な情報について紹介しました。一口に椎間板ヘルニアといっても、厳密な病態や症状、そして治療はそれぞれの動物によって異なります。獣医師と相談しながら、最も良い治療方針を探していきましょう。

「多摩獣医科病院」では犬、猫、うさぎの診療を行っております。昭和47年に開業し、地域に根差したホームドクターとして頑張っています。大切な動物の様子がおかしいなど、少しでも気になることがありましたら、お気軽にご連絡ください。