多摩獣医科病院のブログ

猫の歯科処置の内容とは|全身麻酔、アフターケア、抜歯の有無など

猫の歯科処置の内容とは|全身麻酔、アフターケア、抜歯の有無など

 

猫に歯周病など歯の病気が見つかったので動物病院の歯科に連れて行きたいけれど、どんな処置をされるか分からないと不安に思っている人も多いと思います。本記事では猫に行われる歯科処置の詳細を説明します。全身麻酔やアフターケア、抜歯の有無などにも触れていきます。

歯科処置前には事前検査がある

歯科処置を目的に病院を訪れたら、検査が行われます。目視だけでなくレントゲンなどの機械も交え、猫の正確な歯の状態を判定します。機械を使うことで前歯に限らず、奥歯や歯周ポケットなど、人の目が届きづらい箇所で起きていることも分かります。

特に歯周ポケットは猫自体もあまり噛むのに使わない箇所です。生活における空白域になりやすいので、歯垢や歯石などの異物がたまったまま長期間が過ぎることも多いです。

検査で歯の異常が認められたら、後日処置を行います。基本的に検査当日にすぐ処置が行われることはよほどの緊急時以外にはありません。施術の日程を決めた上で、その日改めて動物病院を訪ねることになります。

施術前には全身麻酔に耐えられるかの身体検査があります。通常のものに加え、血液や超音波の検査などを実施するケースも多いです。

歯科処置では全身麻酔が施されることが多いため、麻酔により身体に悪影響があると猫の容体が急変しかねません。そのため、健全な動物病院は麻酔を見据えた事前検査をします。逆に歯科検査や麻酔前の検査をしない動物病院は安全性が疑われますので、施術を断るべきでしょう。

猫の歯科処置で全身麻酔が必要な理由

猫に限らずペットの歯科処置では全身麻酔を施されるケースが多いです。これには2つの理由があります。

獣医師の負担を和らげるため

獣医師が治療しやすいように全身麻酔でペットをおとなしくさせる目的があります。ペットは人間と異なり、歯に引っかかった異物を取ろうとするだけでも激しい抵抗を見せることがあります。特に猫は口の周りや中に触れられるのを嫌うため、全身麻酔なしでの歯科処置はほぼ不可能といえます。

動物が暴れることで獣医師が患部への治療を適切に行えないことが考えられます。全身麻酔で一度ペットをおとなしくさせることで獣医師も安心して歯科処置に集中できます。

猫の安全を守るため

猫に限らずペットが施術中に暴れるのを防止するためにも全身麻酔は重要視されています。例えば歯石除去だけでもスケーラーという特殊な道具を使います。スケーラーには超音波式とハンド式がありますが、超音波式は歯肉に刺激を与え、ハンド式は先端が鋭く慎重な扱いが求められます。

猫は自身の意思に反する形で口の中に何かを入れられることを嫌うので、無麻酔でスケーラーを使おうとすると激しく暴れて致命的な怪我に至る可能性が高いです。こうした事態を防止するため、猫に一度全身麻酔が施されます。

歯科処置で行われることとは?

施術当日は日帰りが多いです。全身麻酔後に改めて口腔内検査を行います。現時点での歯石のたまり具合や歯並び、歯肉や歯周ポケットなどをくまなくチェックし、状態に応じて獣医師が施術方法を決めます。施術開始後は消毒作業をします。

その後は猫の歯の状態に関わらず、一度きれいにするためスケーリングとして歯石・歯垢除去を行います。基本的に健全な動物病院は、歯石のたまり過ぎや、歯周病や歯肉炎などのダメージがあっても最大限歯の温存や修復に努めます。

安易に抜歯を選ぼうとする動物病院は歯科に対する知識が未熟で、施術ミスによるトラブルの恐れがあります。施術前に内容を予告してきたら、同意を保留し、別の病院にセカンドオピニオンを求めましょう。

歯の温存が決まった場合は、そのまま歯周ポケット内の掃除をします。これはルートプレーニングと呼ばれます。続いて歯垢や歯石の付着を最大限防ぐために、ポリッシングと呼ばれる研磨作業をします。洗浄が完了すれば猫の歯がすっきりと仕上がります。施術後に獣医師は残り歯の本数や歯周ポケットの深さ、抜歯記録などをまとめた後に飼い主に説明を行います。

猫に歯科処置後のアフターケアを行うには

ペットの歯科処置後は飼い主のアフターケアが重要です。基本的に歯科処置の傷が癒えるまでの2週間後ぐらいから始めましょう。

しかし猫は犬以上に口を触られるのを嫌います。特に歯科処置までデンタルケアをしてこなかった飼い主にとっては、これから猫が口を触られることに慣れさせなければいけません。根気を求められるのでなかなかできないのではと不安な人もいるでしょう。

まずは少量の猫用歯磨き粉を鼻先に一瞬だけつけ、舐めてくれるか観察してください。猫の好みのフレーバーをつけることで気に入ってくれる可能性は上がります。舐めてくれたら、1~2秒だけ猫用歯ブラシでブラッシングしましょう。

ペットのための歯磨き成分入りサプリメント、ジェル、おもちゃなどを噛ませてあげるのもおすすめです。ただし、歯の健康のためにと過剰に与えてしまうと別の健康的な悪影響が懸念されますので、適量を守ってください。

また、動物病院などでは猫の歯磨きが行われる日もありますので、日程をチェックして参加してみてはいかがでしょうか。

まとめ

猫は口を触られるのを嫌がる動物なので、歯科処置の際は全身麻酔が必須です。無麻酔を宣伝する動物病院もあるようですが、危険なので推奨できません。

全身麻酔を使った歯科処置の前には、歯の検査で症状が決まり、施術前にも全身の検査が綿密に行われます。健全な動物病院は処置時に、ダメージを受けた歯の温存や修復を最大限に優先しつつ、歯石除去の後で元通りのきれいな歯にします。

処置後のアフターケアも重要ですが、猫はデンタルケアを嫌がりやすいので、鼻先に歯磨き粉をつけて舐めさせるなど、低レベルの段階から慣れさせつつケアしましょう。

神奈川県川崎市宮前区にある「多摩獣医科病院」では、猫に加え、犬やうさぎの歯の治療も承っています。しかし、それ以外の小動物に関しては要相談となります。歯科以外にも一般外来、避妊治療など幅広く対応いたします。当院と同地区にお住まいの方で、ペットの健康に関する困りごとがあればご相談ください。