多摩獣医科病院のブログ

犬・猫の避妊・去勢手術はどのように行われるか~注意点3つも解説~

犬・猫の避妊・去勢手術はどのように行われるか~注意点3つも解説~

 

ペットの望まれない繁殖を避けたり、発情でペットが凶暴化して起きるトラブルを防いだりするためなどに避妊・去勢手術を考える飼い主も多くいるようです。

本記事では、避妊・去勢手術を考えていて処置のプロセスを知りたい人のために、動物の避妊・去勢手術の流れを解説します動物病院で避妊・去勢を依頼する前の予備知識を学び、実際の手術に備える参考にしてください。

避妊・去勢手術を犬や猫などに行う3つの理由は?

ペットの避妊・去勢の主な理由として過剰繁殖、性格の平穏化、病気の影響の3つが挙げられます。

過剰繁殖の防止

ペットの過剰繁殖は社会問題になっています。犬や猫が大量に繁殖をしてしまい、産まれた子どもたちを家に住ませた結果、動物による傷や排泄物などで居住環境が著しく悪化することがあります。また、多頭数の動物が日夜問わず鳴き声をあげていると、近隣住民への迷惑にもなります。

動物が子どもを産み過ぎて飼い主の手に負えなくならないように、避妊・去勢手術を施し、子どもを産めないようにする飼い主が多くいるようです。環境省でもペットの過剰繁殖による環境悪化を憂慮し、健全な飼い方のためにペットの避妊・去勢処置を推奨するほどです。

飼い主のいない動物を多数受け入れる動物愛護センターでも避妊・去勢が必須とされます。そのようにしなければ保護された動物同士の性交の末、子どもが多く生まれてセンターの秩序が崩壊しかねないからです。動物愛護センターが行う避妊・去勢の処置に対し、地元の自治体が助成金を支払うケースもあります。

おとなしくさせるため

大抵の動物は正しいしつけである程度おとなしくなりますが、元来の性格によってそうはならないペットも存在します。発情により大声で吠えて近くにいるペットや人を怖がらせたり、暴れて物を傷つけたり、ほかのペットとケンカをしたりなど迷惑をかけることもあります。

発情はどの動物にもあり得ることで、性ホルモンの発達が動物から理性を奪います。そのため、飼い主がいくらしつけても性ホルモンを動物はコントロールできません。ペットの発情を解決するためにも避妊・去勢手術が有効な選択肢と考えられます。

病気のため

また、犬や猫などの動物も生き物なので、生殖器に腫瘍などの重篤な病気が発生すると摘出を余儀なくされます。これも避妊・去勢につながります。あらかじめ避妊・去勢をしておくことで生殖器の病気を回避することにもなります。

動物病院はペットをどうやって避妊・去勢するのか

オスの動物を去勢する場合は、睾丸内の精巣を摘出します。メスの避妊手術には2つのパターンがあります。卵巣摘出、卵巣と子宮の両方の摘出のどちらかを病院側が選びます。

手術をするということで相当な時間を要すると不安に思う飼い主もいるでしょう。しかし実際は麻酔をしてから手術終了まで1時間程度が多いとされます。総合的な期間は日帰りで済むケースもあり、長くて1日入院にとどまることが多いです。

全身麻酔やメスで身体を切ることを伴うため気軽に依頼というわけにはいかないでしょう。しかし実際は身体検査および手術日の予約から始まり、数日後に避妊・去勢手術を行い、1日だけの入院を経るのみです。この間、1週間も経たないのがほとんどです。退院後も1週間から10日様子を見た後に、抜歯や経過観察のために動物病院を一度訪れることになります。

動物の避妊・去勢で得られる効果を3つ紹介

犬や猫をはじめ、動物の避妊・去勢には、以下の3つのメリットが挙げられます。

1つ目のメリットは、望まれない性交や妊娠を防げることです。特に外で飼っているペットは飼い主の見ていないところで野生の動物と性交し、子どもを作ってしまうケースが考えられ、これを防ぐことは重要です。

2つ目は発情の機会をなくすことです。これによりペットがおとなしくなり、手のかからない形で育てやすくなります。発情による攻撃性や暴走などの癖に悩まされていた飼い主も、世話が幾分か楽になるでしょう。

最後のメリットは生殖器や性ホルモンに関連した病気を減らすことです。オスの前立腺肥大症、メスの子宮蓄膿症、生殖器にできた腫瘍などの異常を完全に防げます。

ペットの避妊・去勢処置における3つの注意点

ペットの避妊や去勢手術をするにあたって、飼い主が注意すべきことが3つあります。

手術当日は絶食

処置当日、ペットは絶食になります。うっかり何かを食べさせると手術が延期になりますので注意しましょう。 麻酔中に発生した吐瀉物による誤嚥の予防が主な理由です。

避妊・去勢で肥満になるケースも

ペットは避妊・去勢により肥満になる傾向があります。発情によるエネルギーの消費機会が失われることやホルモンバランスの変化などが考えられます。避妊・去勢後は毎日のカロリーを3割減らすなど食事の調節がおすすめです。また、ペットショップには低カロリーの動物用フードも市販されているのでチェックしてみましょう。

避妊・去勢はペットが若いうちに判断しよう

避妊・去勢はペットが若いうちに行うのがおすすめです。年齢が若ければ若いほど、手術による副作用や合併症リスクが低く、傷の回復力も早いからです。

一般的な目安として犬と猫はオス・メスともに生後半年前後が理想とされます。またメスは発情期に手術を迎えると出血しやすい傾向があるので、発情する前か終わった後に手術の依頼をすべきでしょう。

まとめ

犬・猫など動物に避妊・去勢手術を受けさせる理由は、過剰繁殖や発情の防止、生殖器の病気などが挙げられます。手術は麻酔の時間も含めて1時間程度で終わることが多く入院も1日だけがほとんどです。

ペットが若いうちに手術を決断したほうが回復力も早いとされます。避妊・去勢後は肥満になるペットもいるので、カロリーを抑えるなどの管理も重要です。望まれない子どもを産んでしまうことによるトラブルを防ぐために、避妊・去勢手術は立派な選択肢として社会的に推奨されています。